PSO2 SS(ショートショート) ラッピーの王子様 改訂版

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~今回の記事についての説明~

※PSO2におけるSS(ショートショート)になります

※以前、投稿した『PSO2 SS ラッピーの王子様』の改訂版です、SS(スクリーンショット)や表現等を一部変更しています

※文章や表現等、稚拙な部分多々あり&とても長いので読むのが苦手な方はお戻り下さい

※SSに登場する設定に関しては実際のPSO2とは全く関係ありませんのでご注意

※お酒、タバコは20歳になってから、登場人物は20歳以上の設定です

 

太陽が西へと沈み、月が何食わぬ顔を出す頃、1人の少女と1匹の『ラッピー』が店の片付けに追われていた

『マイルーム』に喫茶店を構える少女は清潔な『パティシエキャップ』を被り、和の国の正装であり『アークス』の間でも密かな流行となっている和服『ユカタヴィア紅』を身に纏い、長い裾をひらひらさせながら食器の片付けに奔走していた

その衣装は熟練の職人による手作りなのだろう、素人目から見ても分かるその繊細な紅色のデザインと刺繍は目を見張るものがある

現代における戦闘服のような無骨で簡略、機能的に造られたものとは違い、こちらは美術品といっても過言ではない

先の『禍津(マガツ)』との戦闘で犠牲になった都市と人命の数は計り知れない、今となってはこのような代物を産み出せる職人は数少なくなっている

 

さて、彼女の特徴を言葉に表すとするならば、ビスクドールのように整った顔立ち、そして平均的な『アークス』の身長よりも低いのだろう、とても小柄、華奢である

金髪のラフツインテール、『パティシエキャップ』からひょっこりと顔を出す猫耳、幼さが残るものの数々の危機を乗り越えてきた、そんな表情が窺える

その横では綺麗に整理された流し台でじゃぶじゃぶと水遊びをするように皿を洗っている『サマーラッピー』は室内だというのに、大きめのスイムゴーグルを装着していた

足には尾ひれを取り付け、まるで今からでも海水浴に行くかのような出で立ちだ

 

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チョコ『そーぃぇば…マスターも昔はァークスだったんだょね?』

お互い無言だった空間に愛らしく透き通る声が聴こえた、気不味い雰囲気を変える為ではなく―どうやら、ふと彼女が疑問に思ったらしい

 

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マスター「ん?あぁ、去年まではアークスだったねぇ」

泡立った短い手を止め、大きな頭をチョコに振り向くと彼女は不思議そうな様子で訊ねた

チョコ『その時ヵらラッピーだったの…?』

マスター「いやいや…ちゃんと人間の形はしてたよー」

三角の黒いくちばしをポリポリと掻く仕草をして苦笑いをする

腕の長さ的にくちばしまで届いていない気がしたが細かい事は突っ込まないことにした

―此処ではそういう世界なのだから

 

作業の手を止め冷蔵庫から器用にお酒を取り出すとチョコに手渡し、小休止しようという合図を送る

プルトップを開け、チョコちゃんの小さな口でちびちびと飲み始めたのを見計らって口を開く

マスター「上層部の辞令で半年ばかり地球に赴任していた時期があってねぇ…」

地球…チョコが命を授かる時には既にこの船の中であり、チョコ自身母なる惑星というものを知らない

大量の水と少しの陸地、人間が生きていく上で欠かせない空気があるとされる地球

その青い惑星の画像や動画をアークス図書館で食い入るように見たが、実際にこの目で確かめた事はない

一生に一度は見てみたい光景である

そういえば地球名物のぴよこを箱で貰ったが、あまりの美味しさに1日も経たずに全て平らげてしまった事を思い出した

またマスターが赴任する時にはカートンで購入するようにお願いしなくては…

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マスター「向こう(地球)で山積みになっていた業務を片付けて戻ってきたら、アークスのお偉いさんに『貴様はアークスの小娘すらまともに面倒見れんのか!!』とこっぴどく叱られてね」

笑いながらも指で両目を釣り上げ、唸る様な低い声を上げた、どうやら上層部の真似をしているのだろう

小娘というのは恐らくチョコ自身の事であることがすぐに分かった、少し表情が暗くなる

マスター「【…アークス管理者における規則第64の2-アークス管理者はアークスの管理を怠ってはならない、之に例外は設けない】」

「地球に赴任してから約2ヶ月間、宇宙での戦闘が再開した影響か連絡が付かなかった事があるだろう? どうやらその空白期間に上層部は目を付けたらしく管理者の資格は取り消し、気づいたらこの姿になっていたというお話しさ」

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此処で言うアークス管理者とは『コフィー』のようなアークス全体の監視や権限を与える一般管理と違い、更に密接にアークスを管理出来る様に新設された役職である

不慣れな『アークスシップ』での日常生活のサポートや戦闘指南、はては『メセタ』の健常な使用方法の指導まで多岐に渡る

事の発端は『ダークファルス【巨躯】』、『禍津(マガツ)』、『【深遠なる闇】』との激しい戦いを繰り広げ、一定の成果(撃退)を上げたもののアークス側の被害は甚大であった事から始まる

それらの戦いによって犠牲になった『アークス』の殆どが所属したばかりの日が浅い新米アークスであった

この被害を重く受け止めた上層部は配属されたばかりの『アークス』の育成を重要視し、1人の『アークス』に対し1人の『アークス管理者』というワンツーマンでの指導体制を整えた

簡単に説明すれば家庭教師と同じと思ってくれればいい

皮肉にも新米アークスの数よりも熟練アークスの人数が大きく上回ったため、大きな混乱も無く新体制へと移行する事が出来た

 

話を戻すが、能力を秘めた『アークス』というのは組織から見れば喉から手が出るほど欲しい貴重な人材である

各々の努力や積み重ねで『アークス』の適性審査に受かる訳ではなく、潜在的な部分が多い事からも『アークス』となった者に与えられる優遇や特権は計り知れないものだ

彼ら、彼女らが安全にかつスムーズに業務を行えるように身体的、精神的な管理、意志の尊重、疎通というのは何よりも優先すべき事項である

通信障害によって一時的に連絡が途絶えたとはいえ、その問題に対処しなかった結果が今回の処罰であった

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灰皿を取り出し、年季の入った今では骨董品とも言えるZIPPOライターで煙草に火を点けチョコの居る場所に煙が届かないように気を付けながらプカプカと吸い始める

チョコ『それってぁんまりな話だょ ちょっと抗議してくる…』

明らかに怒った表情で腕まくりをしてみせ、鬼のような形相でドカドカと外に出ていこうとする

お偉いさんの所まで辿り着けないとは思うが、後々面倒な事になられても困るのでチョコの前に立ちはだかり、行く手を阻む

まずチョコちゃん、君は酔っぱらいだ

大きな『ラッピー』が少女の前で羽を広げる姿はなんとも滑稽だが

マスター「待て待て、資格が無くなったとはいえオブザーバーとしてチョコちゃんと一緒にいれるのだから結果的に問題はないのさ」

実際の所は上層部の穏健派が我々、『アークス管理者の業務をアークス管理のみに集中して行うべきだ』と強硬派に対して現体制の不備を会議で追求したらしく、資格の一時凍結と『ラッピースーツ』による身体の擬態で手を打ったのが事の真相だ

それにしても…どうしてラッピーなんだ、可愛いからか?愛らしいからか?

恐らく罰ゲーム感覚で答えが導き出されたに違いない

マスター「それ以前に俺は戦闘が苦手でね…仕事の量は減っても給料は変わらないのは中々美味しい…」

と悪い大人の顔をしながら指で丸い輪っかのお金のマークを作って見せる

正直な話、戦闘は得意なほうではない、むしろ苦手分野といえるだろう

元々は各惑星の気候や環境を調査する事務局に所属していた為、戦闘技能は自分でも痛感するほどさほど高くは無い

それが今や、1人の少女を管理・観察する立場にいるのだから、人生何があるか分からないものである

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チョコは険しい顔立ちで不満そうに小さな唇を尖らせてはいたが、渋々納得してくれたようで近くの椅子に腰を下ろして縞々のニーソックスを履いた両足をぱたぱたとさせた

チョコ『でもラッピーのままってぃぅのも大変でしょ それにボク、マスターの顔見た事なぃし…』

初めてチョコと声を交わした時は宇宙空間での戦闘が激しい時期であった

お互い所属の違うシップであった事もあり、ノイズが入り混じる為映像は送受信不可、音声通信のみでの会話で半年を過ごした

戦闘の一時停止が確認できたのち、『キャンプシップ』での降下が許可され地球に赴任し帰還、実際に会った時には既に『ラッピースーツ』の姿で、彼女は凄く怪訝そうな顔をしていたのを思い出して小さく笑った

勿論、中身の人としては可愛いと噂で持ちきりであった少女の姿を見てガッツポーズをしたのは言うまでもない

チョコ『…なんヵ、ラッピーの王子様みたぃだねー』

ポツリとチョコの口から発せられたその言葉に思わず懐かしさを憶えた

 

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ラッピーの王子様…人類が宇宙へと移住して間もない頃に発行された短編小説のことである

大まかなあらすじとしては1人の少女が新米アークスとして各地の惑星を転々と探索しながら行方不明になった幼馴染を探すという物語だ

デブリの衝突によって動力部が損壊し、とある惑星に船が不時着、搭乗していた仲間は衝撃により死亡、彼女1人だけは運良く助かったものの通信機器までもが故障し救援もままならないまま僅かな食料と飲料、武器を手に足を進め、廃棄された工場群が無造作に並ぶ砂漠へと辿り着く

その中で群れから逸れたと思われるラッピーが今にも息絶えそうな状態でいるのを発見するが、彼女は助けるべきかどうか躊躇する

既に食料は尽きて残ったのは飲みかけの回復剤のみ、弾薬も既に空の状態でライフルも只の棒と化していたからだ

今でこそ種類豊富な回復剤が安価で購入できるが、あの当時ではまだ回復としての効果は薄く気休め程度、量産体制も整ってないせいで高価だったのも彼女が躊躇った原因の1つだろう

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それでも自分はもう長く生きられないだろうと決意し、ラッピーに残りの回復剤を全て与える

するとラッピーが淡い光に包まれ、彼を覆っていた大量の羽毛が空へと舞い散り、少女が長年探していた幼馴染が姿を現す

少女は既に虫の息である幼馴染を泣きながら強く抱きしめ、2人の姿と広大な瓦礫に埋もれた砂漠を映してフェードアウトして終わるという何とも後味の悪い話だ

この本を執筆した筆者は宇宙工学と生物学の権威ある教授だった、そして作家でもあったようだ

彼はラッピー種族の保護と他種族の平等を訴え、人類が宇宙に進出する愚かさを皮肉って執筆したようだが、教授が亡くなった今では全く逆の結末になっており、美談として学校の教材となって扱われているようだ

自分の記憶が正しければこの書物は今までに46回にもわたる文章や表現の内容が改訂に改訂という上書きが行われている

人類が宇宙へ移住する中、また『アークス』という肥大化しつつある軍事組織が世間や市民から後ろ指を指されないよう活動を継続していく為には、この書物は不穏分子だったのだろうが作者の意見を全く別物に変えてしまうというのは今でも腑に落ちない

その教授の死因も心筋梗塞だったと報道では伝えられていたが、その病に陥るほど年老いてはいない、否、若い年齢であったと記憶している

今の医療技術ならば完治も容易い病となっているが真実は今でも謎のままである

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チョコ『…そぅだ! マスターもラッピーの王子様みたく飲んでみればぃぃんぢゃなぃ?』

眉間に皺を寄せて険しい表情で物思いに耽けていたのを感じ取ったのだろう、彼女は奥の部屋にある冷蔵室へと入り、踵を返して戻ってきた

アルコールが身体に巡っているのだろうか、ふらふらとした覚束無い足取りで歩き、頬を紅色に染めながらこちらを見上げた

その小さい手には巷で有名な500mlサイズのペットエコボトル飲料水が握られていた

そして蓋が空いている、飲みかけである

中身の人「んん?い、いあ…チョコちゃん流石に間接キスというのは…」

苦笑いをしながら、思わず後ずさる

瞬間、彼女の顔が打って変わって険しい表情になったのが一目で分かった

 

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チョコ『何さー ぁんだヶ可愛ぃー可愛ぃー言ってぉきながらボクの飲み物飲めなぃってこと?』

これはマズイ、チョコの目は本気だ

完全な絡み酒である

これ以上酔っ払い…いや、チョコ様のご機嫌を損ねないよう上手い逃げ道を小さい頭の中で必死に考える

中身の人「いやね、衛生的な問題というよりも倫理的にだねモゴォ」

全てを言い終わる前に左肩を掴まれ、身動きを取れなくした上で飲料水の飲み口をくちばしに無理矢理押し付けられた

―チョコちゃんは可愛い、があくまでも社交辞令、スキンシップとしての愛情表現であり、教師と生徒のような越えてはいけないラインというのがだね…

脳みその中で円卓会議を開いている無数の小さいラッピー達がきゅきゅきゅっ!!と騒いでいる内に時既に遅し

舌に残る煙草独特の匂いに果実の酸味とほのかな炭酸の液体を口の中に流し込まれた

ペットボトルの中身が一気に空になったところで、チョコはニッコリと満足気な様子で手を離した

 

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中身の人「ぷはぁっ チョコちゃん…せめてもうちょっと優しく飲ませてくれ…危うく顎が外れるところだった…」

『スペーツ・ツナ』で後頭部を殴られるよりも命の危険を感じ、危うく酸欠で倒れるところであった、急いで呼吸を繰り返し肺の中に新鮮な空気を取り込む

今度からお酒を飲ませる時には束縛用の縄を買っておかねばなるまい

それ以前にアルコールはチョコにとって着火剤だったようだ

 

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手に持っていた空の飲料をぱっと床に落とし、チョコは恐ろしく驚いた顔を見せた

酔いが覚めたのかどうかは定かではないが、素早く瞬きを繰り返し、何かを言いたそうに口をぱくぱくしている

中身の人「どうしたんだい?何か変なものでも見たかのような…」

それほどまでに驚く彼女の表情は初めて見た

まさか、さっきので永久歯が取れたか、はたまた出血しているのかと舌で上下左右と確認、うむ、ちゃんと生え揃っているようだ

 

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改めてチョコを見ると口をきゅっと閉じ、視線を床に落としていたが先ほどよりも更に顔が赤くなっているのが分かった

自分もそれほど飲まない口ではあるが、体質的に慣れていないのだろうか

水を飲ませてアルコール成分を薄めるべきか、洗面器を持ってくるべきかと頭の中で対応策を考える

中身の人「だ、大丈夫かい… 気持ち悪い時は無理しないで―」

チョコ『にゃぁぁぁぁああああああ』

可愛らしい子猫の奇声を上げながら物凄い勢いで自室へと駆け込んでいく

部屋の向こうでバフっっと音がした、ベッドに倒れ込んだのだろう

それにしても、今のスタートダッシュは『グレイテッセン』を超えたな…

中身の人「ラッピーの王子様ねぇ…確かにいつまでこの姿でいるのだか…」

床に取り残された空のペットボトルを拾い、小さく溜め息をつく

彼は自分自身に起きた変化を、まだ知らない

★続く★

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